月刊3B 2023年9月vol.218

2023年09月25日 (月曜日)

2023

3B Scientificグループに強力なシミュレーター・メーカー2社が加わりました

この度3B Scientificグループは、iNNOGING MedicalおよびLifcast Body Simulationを買収し、医療シミュレーション界における強力なパートナー2社をグループに迎え入れることとなりました。日本のお客様に両社の製品を1日でも早くご紹介できるよう準備を進めて参りますので、どうかご期待ください。

iNNOGING Medical

2018年イスラエルで設立。超音波検査トレーニングのためのSaaSソリューション「e Sono」を開発。インターネットに接続されたデバイスを通じ、いつでも、どこでも、現実的なシナリオによる超音波検査シミュレーションを提供しています。

Lifecast Body Simulation

2017年イギリスで設立。ロンドンのエルストリー・フィルム・スタジオを拠点に、映画製作の先端技術も取り入れた、まるで生きているかのようなマネキンは、医療シミュレーション・トレーニングにおけるリアリズムを革新します。

Lifecast Body Simulation

先生のコラム「時間のものさし」

ことの本質:ヒトのはじまり

今回からしばらくは,ヒトが「歩く姿」と,その姿を作る「骨組み(骨格)」について眺めてみたいと思います。
初回は,ヒト(ホモ・サピエンス)のはじまりについて。

ヒトがヒトであるとする特徴は,遺伝学的にはゲノム解析技術で明確に,「ヒト」か,「ヒトではない」かが区別できるようになりました。形態学的(見た目)には骨の持ち主に「直立二足歩行」で移動していた特徴があるか,ということが重要です。
この意味は,直立姿勢を保っていられる(レッサーパンダの風太くん)とか,直立二足で歩ける(類人猿:チンパンジー)ということだけではありません。ヒトの仲間に加えてもらうためには,移動するときは,立ち上がって二足で歩いている姿が常態(基本)である,という事実が必要です。
風太君は立って静止していただけですので,彼が「ヒト」扱いされることは有りませんでしたが,チンパンジーたちの歩行の様子にはヒトを彷彿させる動きがかなり見られます。仲間同士の出会い挨拶では,立ったまま抱き合ってハグしている姿が映っていまして,びっくりしたこともあったのですが,実際に立っていたのは1~2秒です。すぐに長い腕を床につけてハグはおしまいでした。また,野原を移動している時は,数歩の二足歩行と長い腕を地面についての四足歩行を周期的に繰り返して目的地まで移動しておりました。しかし,立位歩行の一瞬だけの姿をみると,立ち上がり始めた,ちょうど一歳になるかならないかの頃の,おむつをつけた幼児の歩き方を思わせる姿です。ヒトの仲間に加えてもらうためには,もう一息のチンパンジーの映像でしたが,印象深い映像でした。
では,形態学的には,「もう一息」のチンパンジーたちと,ヒトは,遺伝的にどのような関係なのでしょうか。
ゲノム解析によると,人類が近縁のゴリラやチンパンジーたちと共通の祖先から遺伝的に別れたのは,今から700万年前であったということがわかりました。これはすごいことです!さらに,発見された多くの古人骨のゲノム解析から,私たちの直接の先祖であるホモ・サピエンスが,旧人ネアンデルタール人やデニソワ人と分かれたのが60万年前であるとか,他の絶滅人類との交わりもあったことも明らかにされています。これもすごい!(人類の起源,中公新書,no.2683)。
ヒトの身体が立ち上がって二足歩行となり,上肢が身体を支える役目から解放されたことは,人類社会に多大な恩恵をもたらしましたが,一方で,ヒトの身体には,四足動物では殆ど見られない身体上の問題も数多く出てきました。
例えば,腰痛,胃下垂,痔,ヘルニア,難産,骨折,靭帯傷害,転倒など,枚挙にいとまがありません。これらの諸問題はすべて,ヒトの身体に掛る重力の方向が90度変わってしまったことに起因しています。
次回からは,これら直立二足歩行の生活とかかわる諸問題について,なぜそうなったのか,などについて,理解を深めたうえで,諸問題の対処法について,いろいろ考えてみたいと思います。
原因が分かれば,なぜそうなるのか,そうならないためにはどうすればよいかなど,それなりのセルフケアも簡単です。

では,また来月。

出展のご案内

弊社は来月下記の学会で出展致します。ご参加される皆様は、是非弊社展示ブースにお立ち寄りください。

第37回日本助産学会学術集会

10月8日~9日

東京都中央区・聖路加国際大学

編集後記

南北朝時代―五胡十六国から隋の統一まで」会田大輔

南北朝と言っても日本ではなく中国のほうです。中国の南北朝時代というと北魏の華北統一から隋の建国まで150年ぐらいの期間です。中国が大きくは南北に二分していた時代ですね。歴史の流れでは晋から五胡十六国を経て南北朝の時代となり,その後に隋の中華統一に至ります。

300ページ程度の新書で南北朝が成立した経緯から説明するために晋(西晋)末から始めて,南北朝時代の終焉(隋の統一)までの通史を解説しています。通史とは言ってもこのページ数で全てを書くことはできないのでかなりの速さで話は進みます。雅楽の蘭陵王の人物,北斉の高長恭も名前が2回しか出てきません。仮面の逸話(これは史実ではないようですけど)も当然出てきません。

興亡する国の名前被りが多く,区別するために前~, 後~, [東西南北]~などと呼びますが,やっぱり分かりにくいです。

それでもこの本を読むと,今までほとんど知らなかった南北朝時代が,北方からの民族の流入による激動の時代であり,政治や文化が大きく変わった期間だったということが良く伝わってきました。

西晋を滅ぼした北朝の王朝が自身を正統な中華国家と考え,西晋滅亡後に逃れて建てた南朝の王朝を見下していたという記述は面白いと感じました。また新たに興った国が,正統性を主張するために,滅ぼした国に禅譲を強要するとか興味深いです。お題目でしかない「天命を革(あらた)める」という易姓革命の形式が,この文化圏では大事だと,北方からの民族にも認識されていたことに驚きます。

個々の出来事や人物にもそれぞれ興味を惹かれ,もっと詳しく知りたいと思いました。こう考えてしまうのは著者の狙い通りでしょう。著者自身も後書きで「新書の300ページ程度では書きつくせないが,とにかくこの時代で興味のある文化史・政治史を書くことに集中した」みたいな事を言ってますし,これで興味が出たら,それぞれ詳しい本に当ってほしいとも書いてます。

自分はまず手始めに,西晋末から五胡十六国時代ぐらいの関連する本をぼちぼちと読もうと思っています。

By 微