ゼーベック効果

ゼーベック効果

実験番号:UE6020500

金属の両端を異なる温度にすると,自由電子による熱伝導が起こります。そのため温度の低い側の電子密度が大きくなり,温度の低い端の電位が高い端に対してマイナスになります。両端の温度差が大きいほど両端の電位差は大きくなり,その関係は比例します。この比例係数をゼーベック係数といいます。

2種類の異なる金属を接触させてループを作り,両端2つの接点を異なる温度にすると電流が流れます。2種の金属でゼーベック係数が異なることから,同じ温度差でも電位差が異なり,結果両端 にゼーベック係数の差に相当する電位差が発生するためです(図1)。このループのどちらか一方を切り離し電圧計に接続すると,温度差に比例した起電力が測定できます。これが熱電対の原理です。実験では異なる3種類の熱電対で温度を変えながら熱起電力を測定し,その熱電対の感度Sを決定します。

実験の手順

  • 3種類の熱電対を用い,熱起電力Uthと温度T2の関係を測定します。
  • 3種の熱電対全てでUthがT2に対し直線性を持つことを確かめます。
  • 熱電対の感度Sをグラフから求めます。

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基本原理

金属の熱伝導の大半が自由電子によることから,金属の端を一方は加熱,他方は冷却と温度勾配を持たせると,自由電子密度も両端で異なります。具体的には温度が低い端の自由電子密度が高温度端より大きくなります。熱運動による拡散と電子密度差による電場が釣り合うことで自由電子密度が定常状態となり,両端に電位差が生じます。この電位差は温度差に比例しています。この現象をゼーベック効果と言い,温度に対する電位差の比例係数をゼーベック係数と言います。

ゼーベック係数は物質により異なるため,2種類の異なる金属を接触させループを作り一端を加熱・他端を冷却するとゼーベック効果による起電力が金属間で異なり,このループに電流が流れます。今,一端を切り離し,電圧計を接続すると温度差による正味の起電力が測定できます。起電力はゼーベック効果による起電力の差であるため,測定される起電力も温度に比例します。これが熱電対の原理です。

自由電子の熱拡散による電位差をUtdとするとゼーベック係数kを用いることで温度差と次のように比例式で結ばれます。

1

ここでT2は高温側温度でT1は低温側温度です。

2種類の異なる金属線の一端を接続し開放端と温度差を持たせると次式で表わされる熱起電力Uthが発生します。

2

ここで添え字のA,BはそれぞれAという金属,Bという金属の意味です。またkB>kAとします。熱起電力Uthが温度に比例することから温度計として使用でき,2種の異なる金属接続線を熱電対と呼びます。

熱電対の感度S(温度変化に対する熱起電力変化の大きさ)は次のように定義できます。

3

通常,熱電対の電圧測定端は一定温度に保たれますので,上式は被測定物の温度変化に対する熱起電力の応答となります。

(3)式に(2)式を用いると

4

となります。kBAは熱起電力を測定することで容易に求められます。

実験は3種類の熱電対それぞれで温度を変えながら熱起電力Uthを測定します。この熱起電力Uthを測定するマイクロ電圧計は大きな入力インピーダンス(~100kΩ)を持つのでほとんど電流が流れず,電圧を正確に測定できます。

本実験では電圧測定端(マイクロ電圧計の接続端子)は常に同じ温度ですので,測定される起電力は熱電対の温度測定端(2種金属の接合端)の温度変化でのみ変動します

評価

測定データをグラフにし,Uthが温度Tに対して直線性を持つことを確かめ,傾きから感度Sを決定します。また,求めたSを用いて未知温度を測定し検証することも,興味深い実験となります。

熱電対の温度に対する直線性は,ある温度範囲で近似的に成り立つものです。直線性を持つと見なせる温度範囲は,熱電対の種類によって異なります。測定する温度範囲と使用する環境への耐性などにより,適した熱電対を選択する事が必要です。

また,ゼーベック効果は半導体でも観察でき,この時の発生する熱起電力の正負によって,その半導体のキャリア種類(電子/ホール)を判別できます。

参考資料