ロッド中の音速
実験番号:UE1070410
実験の手順
- ロッド端を叩き,パルス状の縦波の音波を発生させます。
- マイクロフォンをプローブにしてオシロスコープで音波を検出します。
- ロッド内を伝わる音波の速度を,パルス波の伝播時間から求めます。
- 付属のサンプルで測定を繰り返し,ロッド材料とその長さがどのように音速に影響するか,解析します。
- 物質内を伝わる縦波の伝播速度と物質の密度から,物質のヤング率を求めます。
実験に必要な機器
- U8557180-115:ロッド中の音波伝播実験セット ×1
- U11830:USBオシロスコープ2x25MHz ×1
- Windows PC ×1(別途ご用意ください)
実験解説書
基本原理
音波は気体や液体,固体内全てで伝播します。気体や液体では縦波(疎密波)のみですが,固体 では縦波,横波,屈曲波などが伝播します。
ロッドに沿った弾性波の縦波は,ロッドの長さ方向への周期的な引張と圧縮の連続によって伝播します。固体の引張は,原子が励起されて静止位置からずれることにより生じます。
ロッドの半径がその長さに比べて十分小さい場合には,ポワソン比(応力に垂直な方向へのひずみと応力方向へのひずみの比)はゼロと見なすことが可能なため,横方向への圧縮の効果は無視できます。
この場合,垂直応力σ(x,t)と変位ξ(x,t)の時間・空間的な変化の関係は,フックの法則と運動方程式から次のように導けます。
(1) \( \frac{\partial \sigma} {\partial x} = \rho \frac {\partial v} {\partial t} \) 及び,\( \frac {\partial v} {\partial x} = \frac{1}{E} \frac{\partial \sigma} {\partial t} \) ここで,\( v = \frac {\partial \xi} {\partial t} \)
\( \rho \):ロッド材料の密度,\( E \):ロッド材料のヤング率,\( \xi \):ロッド長さ方向へのの変位,とします。
これらから,次の波動方程式が得られます。
(2) \( \frac { \partial^2 \sigma} { \partial t^2 } = \frac{E}{\rho} \frac { \partial^2 \sigma }{ \partial x^2} \) 及び,\( \frac { \partial^2 v }{ \partial t^2 } =\frac { E }{ \rho } \frac { \partial^2 v }{ \partial x^2 }\)
(2)式は波動方程式なので解の一般的な性質から,縦波の伝播速度は次の式で与えられます。
(3) \( c_L=\sqrt{\frac{E}{\rho}} \)
実験は次のように行います。
- サンプルロッドをマットの上に置き,マイクをロッド端部から1mm程度に近づけて配置します。接触しないよう注意してください。
- マイクロフォンボックスを通じてオシロスコープに接続し,叩く側のマイク入力信号でシングルトリガがかかるよう設定します。トリガレベル確認のため,何度か叩く力とトリガレベルの調整を行うと良いでしょう。
- ロッド端を付属のハンマーでロッドに水平に軽く1回叩き,パルス状の音波を発生させます。
- オシロスコープで信号感の時間間隔と伝播距離から音速(縦波)を計算します。図1は400mmのステンレスロッドの入射波と反対端で反射された反射波の時間間隔を測定しています(約162μs,伝播距離=ロッド長400mm✕2=800mm)
- ロッドが長いと入射波と戻ってきた反射波は明確に分離できますが,短いロッドでは入射波と反射波は重なり合い,定在波を形成します(図2,100mmのステンレスロッド)
- サンプルの質量を測定し,密度を計算します。
- 測定した音速と密度から(3)式を使い,それぞれのヤング率を計算します。表1は測定例です。
- 音速は入射端(叩く側)と反対端との信号時間差で計算することも可能です。そのときには伝播距離はロッド長と等しくなります。
評価
音波の速度はマイクロフォンプローブの信号をオシロスコープで測定することで求まります。ロッドの長さ方向に沿った往復に要する時間から,以下のように求められます。
\( c_L = \frac{2L} {T} \)
\( L \): ロッドの長さ
これは,パルス波形をした音波が時間 \( T \) の間にロッドの長さの2倍の距離を移動する(他端までの往復をする)ことによります。
各材料のヤング率は,伝播速度の測定値と,ロッドの重量の測定から得られる各材料の密度の値とを使って,式(3)から求められます。
(サンプル内容は変更になる場合があります。)
材質 | cL [m/s] | ρ[g/cm3] | E [GPa] |
---|---|---|---|
ガラス | 5370 | 2.53 | 73 |
アルミニウム | 5110 | 2.79 | 73 |
木材(ブナ) | 5040 | 0.74 | 19 |
ステンレス鋼 | 4930 | 7.82 | 190 |
銅 | 3610 | 8.84 | 115 |
真鍮 | 3550 | 8.42 | 106 |
透明アクリル樹脂 | 2170 | 1.23 | 6 |
ポリ塩化ビニール | 1680 | 1.5 | 4 |