偏光と光学活性

偏光と光学活性

実験番号:UE4040300

糖溶液は光学的に活性で,溶液内を通るどのような直線偏光に対しても,その偏光面を回転させます。その回転方向は砂糖分子の性質に依存します。これによりブドウ糖とショ糖(スクロース)の溶液では,偏光面は右回り(時計回り)に,果糖溶液では偏光面は左回り(反時計回り)に回転することが,偏光計を使った回転角の測定で確かめられます。本実験ではショ糖溶液に塩酸を加えたときに生じる現象も,偏光面の回転角の測定を通じて調べます。この化学反応により,ショ糖分子の二重リング構造が2つに分解されてブドウ糖と果糖の等モル混合物に変化します。この為,偏光面の回転方向が時計回りから反時計回りへと緩やかな反転が生じます。この混合物の回転角は右旋性を有するブドウ糖の回転角と,これよりも強い左旋性を示す果糖の回転角の和になります。

実験の手順

  • 試料の長さを変えながら,偏光面の回転角を測定します。
  • 溶液濃度を変えながら,偏光面の回転角の関係を測定します。
  • 異なる光の波長に対する比旋光度を測定します。
  • 果糖(フルクトース),ブドウ糖(グルコース)とショ糖(スクロース)の糖溶液で発生する偏光面の回転の,回転方向と回転角を比較します。
  • ショ糖であるブドウ糖と果糖の等モル混合物への変化に伴う偏光面の回転方向の反転を,偏光面の回転角を測定して確かめます。

実験に必要な機器

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実験解説書

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基本原理

光学活性という用語は,直線偏光した光がある種の物質内を透過する際に,偏光面が回転する現象を指します。この回転は糖などのキラル分子の溶液中や,石英のような特定の固体中で観察されます。光の進行方向と反対側から見て右側(すなわち,時計回り)に偏光面を回転させる物質は,右旋性と呼ばれ,逆の挙動を示す物質は左旋性と呼ばれます。ブドウ糖やショ糖の溶液は右旋性を持ちますが,果糖溶液は左旋性を持ちます。

溶液による偏光面の回転角 α は溶質の性質に依存し,溶液の濃度 c (単位体積あたりの質量)と試料の長さあるいは厚さ d に比例します。この関係は次のように表されます。

(1)数式

[α] は溶質の比旋光度と呼ばれます。比旋光度は光の波長 λと試料の温度 Tに依存し,この関係(旋光分散)は近似的に,ドルーデの単項式という以下の形に表されます。

(2)数式ここでK(T) ,λ0 は物質固有の定数です。

通常,文献などに記載されている [α] の値は環境温度 25℃ における黄色のナトリウム光に対する値です。[α]が既知の場合に,溶液の濃度は偏光計で回転角を測定することによって決定できます。 本実験では異なる糖が溶解した糖溶液に対して,異なる条件下で偏光計を使って回転角を測定し,糖溶液の違いによる回転角の違いを比較します。4つのLEDのどれを使うかによって,光の色(波長)を変えることができます。

塩酸を通常のショ糖(スクロース)の溶液に加えた結果についても同様に調べます。この処理によりショ糖分子の二重リング構造が分解されて,ブドウ糖と果糖の等モル混合物に変わる反応がゆっくりと進行します。この過程で,偏光面の回転方向が時計回りから反時計回りへと「反転」します。この現象はショ糖の分解反応が完了すると,偏光面の回転角が右旋性を有するブドウ糖の回転角と,これよりも強い左旋性を示す果糖の回転角の和になることに起因します。

評価

式(1)によれば,与えられた物質の固定濃度の溶液内での偏光面の回転角は,試料の長さに比例します。また,試料の長さを固定した場合には,この回転角は溶液の濃度に比例します。偏光計を使って測定した結果のプロットである図1の原点を通る直線の勾配から,実験で使用する4種類の光の波長の各々に対する比旋光度を計算することができます。

参考資料

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