予測する脳を重視した姿勢制御訓練
日常動作は姿勢制御の積み重ねです。例えば,手で物を取ろうとする場合,上肢の筋肉の活動に先立って,身体の動揺を予測して,身体を安定化するために,体幹・下肢の筋肉がいち早く活動します。このような観点から,体幹・下肢の筋は,局所を動かすために存在するというよりも,目的の動作を遂行するために身体の動揺を予測して制御し,平衡を維持する姿勢制御筋として捉えるべきだと考えます。
姿勢制御のためには,次の3つの機能が重要です。
- 地面把握機能を向上させる
- 支持足の機能を生かす
- 不意外乱へ対応する
この3機能のためには股関節制御,足関節制御の機能が重要です。姿勢制御には股関節制御と足関節制御があり,小さい外力やゆっくりとした外乱に対しては足関節制御。また,大きい外力や,急激な外乱に対しては股関節制御が優位となります。このように,股関節制御と足関節制御は,身体に外乱が加わった場合など重心の支持基底面内からの逸脱を防ぐ際や,新たな支持基底面へ重心を移動させる際などに機能します。これらを通して,予測可能な脳を育てることで,より的確な姿勢制御を目指します。
このDVDでは,上記3機能のための訓練を,この順序で理論を解説し,具体的な訓練方法について容易なものから順に紹介しています。ここで紹介している個々の訓練は全体の部品にしか過ぎません。訓練対象者の要求度,年齢,疾患に応じて,これら部品を選択し組み合わせることで,全体としての訓練メニューが出来上がります。対象者に合った訓練プログラムを,独自に組み立てられることを願っています。 是非,姿勢制御の向上にお役立てください。
指導・解説:
- 井原 秀俊(九州労災病院 勤労者 骨・関節疾患治療研究センター・センター長/整形外科医師)
- 森口 晃一(福岡県済生会八幡総合病院/学術推進本部副部長/理学療法士)
実技:
- 田川 真理(福岡県済生会八幡総合病院/理学療法士)
- 撮影協力:福岡県済生会八幡総合病院
予測する脳を重視した姿勢制御訓練の内容(45分)
はじめに:理論概要
地面把握機能を向上させる
- *姿勢制御の解説
- 足指ジャンケン動作
- 足指壁移動
- ボール壁移動
- 腹臥位下半身浮上
- ビー玉移動
- 足裏マサージ器回転
- 両足指シーツ引っ張り
- タオルたぐり寄せ
- 両足指床把握
- 片足指床把握
- 重心前方移動に対する足指踏ん張り
- 立位踵挙げ
- 芋虫歩行
支持足の機能を生かす
- *支持足の機能解説
- 階段下降時支持
- 相撲四股時支持
- ボール外乱支持
不意外乱へ対応する
- *不意性に対する予測制御の解説
- 足関節中心での重心前後移動制動
- 片足重心前後移動制動
- ハーフストレッチポールでのスクワット
- 片足エアークッションでの制動:膝伸展位
- 片足エアークッションでの制動:膝屈曲位
- 両足椀型不安定板制動
- 半円柱状ポール前後傾斜制動
- 片足椀型不安定板制動:2種目
- 両足半円筒型不安定板制動:2種目
- 両足大型不安定板外乱制動:4種目
- 開眼片足バランスパッド制動
- 閉眼片足バランスパッド制動
- バランスパッドでのジャンプ着地制動
- 片足半円筒型不安定板制動:2種目
簡便的に評価する
- 地面把握能評価(足握力/タオルたぐり寄せ能)
- 姿勢制御能評価(不安定板平衡保持最長時間評価/不安定板平衡保持失敗数評価)
エンディング