表面筋電図を用いた筋の質的機能評価 〜股関節疾患患者の歩行障害の特徴と実践的治療戦略〜
最新の研究データをもとに筋の質的評価の重要性と, 臨床のヒントになるような,筋の質的トレーニングの世界へと案内します!
近年,医療機関は在院期間短縮の流れにあり,リハビリテーション(理学療法)も効率よく行う必要性があります。しかし,現状をみると根拠に基づいた理学療法サービスが十分提供されているとは言い難いのではないでしょうか?例えば,運動器疾患の廃用性筋萎縮に対する筋力強化訓練法として,主に重錘負荷等によるトレーニングのみを実施している施設は少なくありません。しかしこれらの訓練により,ある程度筋力の回復が得られても,実際の動作,例えば股関節疾患患者であれば,歩行動作の異常の一つとしてTrendelenburg跛行や荷重時の関節・体幹の不安定性が残存し,動作障害が十分改善されていない症例をしばしば経験します。このことは単純に「筋力の回復」=「有効に活用しうる筋力の向上(筋の質的向上)」にはならないことを意味しています。そこで今,理学療法に必要なものは従来の量的な筋力増強訓練に加え, 別の質的な筋力向上を図る訓練プログラムを作成することであり,その筋の質的評価法の確立にあります。そこで,本DVDでは表面筋電図を用いた,筋の質的評価の重要性と具体的治療アプローチについて紹介します。
指導・解説:
加藤 浩
九州看護福祉大学 看護福祉学部 リハビリテーション学科 理学療法専攻 教授/保健学博士/専門理学療法士(運動器・基礎)/認定理学療法士(運動器)
実技:
九州看護福祉大学 看護福祉学部 リハビリテーション学科 加藤研究室
表面筋電図&歩行時における筋の質的評価(68分)
世界に先駆けてwavelet変換とよばれる工学技術を表面筋電図(EMG)周波数解析に応用し,股関節疾患患者を対象に歩行時立脚期の中殿筋の動的EMG周波数特性の評価(筋の質的評価)を行いました。その結果,跛行の顕著な患者さんほど立脚期初期(踵接地時)の平均周波数の上昇が認められず,その原因にtypeⅡ線維を支配する運動単位の動員数と発火頻度の減少の可能性が示唆されました。さらに,中殿筋生検を行い組織形態学的分析からwavelet周波数特性の意義について検討した結果,動的EMG周波数特性はtypeⅡ線維の線維径と深く関連しており,wavelet周波数解析はtypeⅡ線維の非侵襲的廃用性筋萎縮評価に有効でした。このwavelet周波数解析の最大の特徴は,あらゆる日常生活動作に直結した動作時における,筋の質的評価を可能にするものであり,多くの運動器疾患におけるパフォーマンス評価に応用することが期待され,今後のリハビリテーションの治療技術を大きく発展させていく可能性を秘めていると考えます。本DVDでは基本的なEMGの紹介から使い方,さらにはwavelet周波数解析の臨床応用について解説します。
イントロダクション
表面筋電図(EMG)とは何か?
- 神経~筋システムについて(筋組織の特徴/筋収縮の基本単位(motor unit))
- EMG解析の特徴(積分筋電図解析/周波数パワースペクトル解析)
歩行時における筋の質的評価
- wavelet周波数解析
- 股関節疾患患者の歩行障害の特徴(周波数パワースペクトル特性)
- 股関節疾患患者の中殿筋組織病態
筋機能の3要素&多関節運動連鎖における歩行時筋機能特性(92分)
近年,下肢運動器疾患の理学療法に関する研究内容は大きく変遷してきました。それは障害構造の捉え方が,従来の罹患関節に限局した局所的視点(単関節運動の視点)から,姿勢や動作といった全身的視点(多関節運動連鎖の視点)へシフトしてきたことです。そこで多関節運動連鎖の視点から下肢運動器疾患の姿勢・運動(動作)を捉えると,主として3つの連鎖不全が影響しています。1つ目は「筋の収縮連鎖の問題」,2つ目は「運動連鎖の問題」,そして3つ目は「力の連鎖の問題」です。本DVDでは主に変形性股関節症疾患患者を例に,筋機能の3要素や多関節運動連鎖の視点から捉えた筋機能特性について解説します。
筋力とは何か?~筋機能の3要素~
- MMTで評価している筋力とは?
- 空間的要素(combination)
- 時間的要素(reaction time)
- 強さの要素(モーメント・パワー)
多関節運動連鎖の視点から捉えた歩行時筋機能特性
- 筋の収縮連鎖からみた特性
- 運動連鎖からみた特性
- 力の連鎖からみた特性
実践的治療戦略のポイントとトレーニング(51分)
本DVD では,実践的治療戦略のポイントとして,筋の質的機能を高めるために下記の7つのキーワードから, 明日の臨床のヒントにつながるような内容を実技中心で解説します。
実践的治療戦略の7つのキーワード
- 筋の収縮感覚を重視したトレーニングが有効
- 単関節運動より多関節運動が有効
- 直線運動より回旋運動が有効
- 筋の弛緩連鎖を利用したトレーニング
- 踵接地を意識させた歩行練習
- 筋力を「筋腱複合体」として捉えたトレーニング戦略
- 床反力ベクトルを考慮したトレーニング戦略