電子線偏向の応用～電場と磁場～

実験番号：UE3070800

電磁場内電子線トラジェクトリ観察機は，熱陰極線から放出される電子線を方向を蛍光スクリーンで観察するための機器です。真空管内で発生した電子線は，底部の蛍光スクリーンに当たり，緑色の輝点を発生させます。平行板電極にノコギリ波電圧（ランプ電圧）を印加すると電子線が曲げられ，一定の速度で蛍光スクリーンを水平に掃引していきます。輝点はスクリーンの端部まで進むと（ノコギリ波電圧なので）反対端に一瞬で戻ります。この掃引の周波数は調整できます。縦方向の電圧情報は，真空管外部のコイルによる磁場により与えられます。磁場に従って電子線が変更するため，電圧情報を見ることが可能となります。この時間に従った電場による横方向の掃引と磁場による縦方向の波形の合わさったものが，管面に表示されます。

実験の手順

• 電子線が電場により曲げられることを確認します。
• 電子線が磁場により曲げられることを確認します。
• 関数発生器による周期信号を，電磁場内電子線トラジェクトリ観察機
• コイルを2個使い，リサージュ図形を観察します。

実験に必要な機器

• U8481350：電磁場内電子線トラジェクトリ観察機 ×1
• U8533600-115：関数発生器 ×1
• U138021：プラグ付き安全リード線・75cm・15本セット ×1
• 高圧直流電源(500V/50mA) （別途ご用意ください）
• 直流電源(10V/3A) ×1 （別途ご用意ください）
• 直流電源(50V/50mA) ×1 （別途ご用意ください）

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実験解説書

実験解説書 ダウンロード（PDF）

英語版 実験手順書 ダウンロード（参考，一部取り扱いのない製品も含まれています）

英語版 電磁場内電子線トラジェクトリ観察機 取扱説明書 ダウンロード

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基本原理

本実験器では，電子線は熱陰極線から放出され，穴の開いた陽極に印加する電圧で加速されます。この電子線の絞りは，熱陰極線を覆うように配置されている円筒状のウェーネルト電極に負電圧を与えることで行われています。この電子線が管底部の蛍光スクリーンに当たることで，緑色の輝点が観察できます。管に封入されたNeガスにより，暗いところで側面から観察すると電子線が赤く発光して見えます。

電場による偏向は，ウェーネルト電極を通過したあとの2枚の平行板電極で行います。内蔵の掃引電圧発生器からノコギリ波電圧を印加すると，電子線の水平方向掃引を行います（左から右へ）。掃引周波数は0.5～650Hz で調節可能であり，これを使わず外部から電圧を印加することもできます。この水平方向の掃引が行われているときに，真空管の外に配置されたコイルに，関数発生器などから時間変化する電圧を印加しすることで，変動磁場を電子線に与えられます。コイルに印加した時間依存する電圧の波形が，電場で水平掃引される電子線に重畳され，管面上で確認できます。外部からの変動磁場と掃引電圧の周期を同調させることで，静止した波形を見ることもできます。

電場による偏向

電場から電子が受ける力(クーロン力)による電子線偏向は，管に内蔵された平行板電極に電圧を印加することで確認できます。機器に内蔵されたノコギリ波の変動電圧を印加した場合は，電極が横 に配置されているので，水平にスクリーン上の輝点が移動します（左から右）。

平行板電極のリード線を外部電源に接続すれば，変動電圧も含めて任意の電圧での電子線偏向を確認できます。→結線図は英語版取扱説明書 Fig.2

磁場による偏向

磁場から電子が受ける力（ローレンツ力）による電子線偏向は，管の周囲に配置された金属リングにコイルを取り付けることで行います。

コイルの配置及びコイルの個数（3個まで）は任意ですが，最初はコイル１個で行うのが良いでしょう。またコイルのタップを切りけて接続することで，電子線の偏向からコイル巻き数と磁束密度の関係も観察できます。→結線図は英語版取扱説明書Fig.3

リサージュ図形の観察

オシロスコープなどで2 つの信号の周波数・振幅・位相の比を確認するために使われる手法です。

実験は，電場と磁場ではコイルの印加電圧と電流の位相差を制御するのが難しいため，コイル２個を使って行うほうが簡単です。

同梱されているコイルは同一に製造されていますが，個々の微小な差異がリサージュ図形を観察したときに見えてしまいます。（例えば，一つのファンクションジェネレータをパラで２つのコイルに接続したとしても，x-y で45°から傾きがずれることがあります。）

そのため，最初に同一周波数・電圧振幅・位相の波形を2つのコイルに入力して，その後45°傾きの直線となるよう，調整します。そのあとで，片方の振動数や位相などを変化させ，どのようなリサージュ図形が管面で観察できるか確認していきます。→結線図は英語版取扱説明書Fig.5

参考資料